TMS治療機器の違い

日本での代表的なTMS治療機器

日本でのTMS治療機器の特徴まとめ

TMS治療で使われる医療機器は、日本では『薬物抵抗性のうつ病』への治療用機器として、2017年9月NeuroStar(アメリカ Neuronetics社製)、2019年1月Brainsway(イスラエル BrainsWay社製)が認可を受けています。

その他のMagpro(デンマーク MagVenture社製)TAMAS(韓国 REMED社製)magstim(イギリス Magsteam社製)は検査用機器として承認を得ています。

日本で使われているTMS治療機器

日本では、保険診療はNeurostarのみ認可されています。

しかしながら要件が厳しく、大きな病院でしか施設基準を満たせません。また入院治療で行わざるを得ず、なかなか普及していないのが現状です。

このため日本では、自由診療でTAMASとMagproを使用している医療機関が多いです。

TMS治療機器としての本体代が大きく異なりますので、導入コストを大きく抑えられるTAMASを利用している医療機関が多いです。

医療機器としての信頼性とサポートを大切にし、当院ではMagpro(マグプロ)を導入しています。

TMS治療機器の違い

TMS治療機器の違いを説明させていただくときには、「トヨタ車」と「新興国の車」の違いとご説明するとイメージができるかと思います。

後述していきますが、TAMASもアメリカFDA認可をえていますがrTMSのみで、iTBSは実施できるものの認可されていません。

そして新しい会社の製品でもありますので、保守やサービスの面での安心感の違いがあります。

ですから、「走ればよい」と考えるならば「TAMAS=新興国の車」でも十分ですが、「安心感も」と考えるならば「Magpro=トヨタ車」とイメージいただけると、お分かりいただけると思います。

NeuroStar(アメリカ)Neuronetics社 取り扱い 帝人ファーマ株式会社

ヨーロッパでTMS技術が発明され、最適なTMS治療プロトコールの研究が始められていた2003年に設立されました。

2008年米国で初めてうつ病の治療機器としてFDAの承認を受けて以来、唯一のメーカーとして存在してきました。

日本の保険診療で使うことができる医療機器は、ニューロスターのみとなります。

ですから保険診療でのrTMS治療を行っている医療機関(病院)では、こちらの機械が使われます。

プロトコールも決められており、約40分の治療を週5回、計20~30回行っていきます。

機器の特徴

治療設定が比較的に簡単であるのが特徴です。

装置に内蔵されているレーザーを用いて頭の位置を調整し、細かく調整することで、個々に応じた適切な刺激位置を設定することができます。

また位置情報をシステム内に記録することができるので、2回目以降に時間をかけずに同じ設定で治療を行うことができます。

コイルカバーには接触センサーが付いていて、リアルタイムに検査状況をモニターできます。

うまく刺激ができていなかった場合に、足りない刺激回数分を追加刺激することができます。

認可の状況

ニューロスターは、FDAで初めて認可されたTMS治療機器でパイオニア的な存在です。

日本の保険適応としての治療機器は、ニューロスターのみとなります。

8の字コイルを使用しており、海外では少し遅れてiTBSを導入し、2022年5月には強迫性障害に対するF8コイルが認可されました。

Magpro(デンマーク)Magventure社 取り扱い インターリハ株式会社

TMS治療機器マグプロの実際の画像

Magventure社は、MagStim社と並んでヨーロッパにおけるTMS機器パイオニアになります。

デンマークに拠点があり、1992年に最初のTMSシステムをサウスカロライナ医科大学に販売して以来の歴史があります。

より効果のある刺激が可能なため、治療時間を短縮できるシータバースト(iTBS)があります。

従来のrTMSでは40分弱の時間がかかっていましたが、1回の磁気刺激時間が3分と大幅に短縮された刺激方法です。

臨床研究や基礎研究の分野で幅広く使用されていて、またリハビリ領域でも広く使われている機器になります。

機器の特徴

rTMSでは高頻度の磁気刺激を加えて電流を生じさせるため、熱を生じてしまいます。

マグプロでは、高性能のクーリングシステムがあるために動作が安定しています。

またマグプロは、個々に設定を合わせやすいことも特徴のひとつです。

刺激持続時間設定も任意に設定でき、様々なコイルが開発されているので、様々な刺激方法が選択できるのも特徴です。

コイルによる違い

認可の状況

うつ病でのFDA認可を得ており、rTMSに加えて2018年にiTBSでFDA認可をうけた最初の企業の一つになります。ExpressTMSの商標を登録しています。

またD-B80コイルは、強迫性障害(OCD)の補助的治療のために2020年にFDA認可を取得しました。

TAMAS(韓国)REMED社 取り扱い 株式会社スカイネット

こちらもシータバーストを搭載しています。

油冷却方式で発熱を軽減し、比較的に静かな音での刺激が可能となっています。

またコイルが固定されているため、他のコイルに付け替えることなどができません。

欧米でも新しく認可された機器で保守面での懸念と、後述しますが、iTBSでのFDA認証がとれていないことがデメリットとなります。

認可の状況

BlossomTMSやALTMSといった名称で海外では発売されています。

FDAの10Hz高頻度rTMSのみ認可されており、iTBSなどは認可されていません。

韓国国内ではMFDSという医療承認を受けており、日本では検査機器として承認されています。

BrainswayTMSシステム(イスラエル)Brainsway社 取り扱い センチュリーメディカル株式会社

Brainsway社は、dTMSによる深部経頭蓋磁気刺激方法のみのデバイスとなっています。

機器の特徴

ヘルメットに収納されたHコイルにより、広範囲でかつ深部まで刺激可能となっています。

深部脳組織への刺激が可能ですが、空間分解能は低下してしまうのでピンポイントの刺激がしにくくなります。

このためブレンズウェイではより多くのエネルギーを必要とし、患者さんの不快感は強くなります。またけいれん発作リスクも高まります。

認可の状況

BrainsWayは、日本でも2019年1月21日に医療機器承認をうけているTMS機器になります。

しかしながら現状では、保険診療はニューロスターのみとなっています。

アメリカでは治療抵抗性うつ病に対する適応が認められています。

また、H7コイルが2018年8月にOCD(強迫性障害)に対してもFDA承認、H4が2020年8月にニコチン依存症の補助治療に対して承認されました。

Magstim(イギリス)Magstim社 取り扱い ミユキ技研株式会社

MagStim社は、Magventure社と並んでヨーロッパのTMSメーカのパイオニアになります。

空冷システムが備わっていますが、ファンの音量が少し大きいといわれています。

イギリスを拠点としており、1985年にはじめて機器を開発し、1990年より販売されています。

認可の状況

rTMSとiTBSとnavigatedTMSがFDAで認可されています。

FDAで認可されているデバイス

日本では上記のTMSデバイスが使われていますが、海外では多くのデバイスが使われています。

FDAではこれ以外に、以下のデバイスが認可されています。

  • アポロ(ドイツ)Mag&More社
  • cloudTMS(ロシア)NeuroSoft社
  • NexStim(フィンランド)Nexstim社

また疾患やプロトコールごとにFDAで認可されている特徴をまとめると、以下のようになります。※「不安」は、うつ症状に伴う不安になります。

TMS治療機器 iTBS rTMS 強迫 不安 禁煙 コスト
ニューロスター ×
マグプロ × ×
タマス × × × ×
ブレンズウェイ
マグスティム × × ×
アポロ × × × ×
ネクスティム × × ×

当院ではこれらを総合的に考え、マグベンチャー社のマグプロを導入しています。

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表

適切なTMS治療を行っていくためには、TMS治療の知見はもちろんのこと、前提となる心の治療経験が非常に大切です。

当院には10名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師4名のみ(2021年9月現在)が担当させていただきます。

TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場に立ってご相談させていただきます。

TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください。

大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了