TMSと短期集中治療(accelerated-tms)
TMS治療のメリットとして、短期集中での治療も可能であることが挙げられます。
通常の抗うつ剤では、1~2か月かけて治療効果を評価していく必要があります。
TMS治療では、短期集中して治療をおこなうことで、最短で2週間での治療が可能となります。
TMS治療のメリットとして、短期間での回復が期待できることあります。
ここではTMS治療の短期集中治療について、詳しくお伝えしていきます。
accelerated-tmsとは?
日本語に訳するとしたら、「急速TMS治療」「加速型TMS治療」となるでしょうか。
1日に複数回のTMS治療セッションを行う方法(プロトコール)のことをいいます。
TMS治療は磁気の力を介して脳に電気的な刺激を与えますが、高頻度の刺激は脳を興奮させ、低頻度の刺激は脳を抑制するといわれています。
このように1日に複数回刺激する方法(aTMS)は、高頻度刺激によって脳を興奮させる方法(興奮性プロトコール)で行われます。
TMS治療の研究の中で、短い間隔で脳を刺激すると、効果が高まることがわかってきました。そして集中的に刺激を行うと、治療効果が持続しやすいことが少しずつわかってきました。
集中的に治療ができれば治療期間を短くでき、病気での損失を減らすことができるため、治療方法として研究がすすめられています。
アメリカでは、最大で1日10回のTMS治療セッションを5日間、合計50回での刺激をaccelerated-tmsとして行っています。
accelerated-TBS
従来のrTMSの刺激方法を工夫して、より効率的な方法としてintermittent-TBS(i-TBS)が開発されました。
こちらの刺激は50HZの高頻度刺激3発を断続的に刺激していくのですが、3分あまりの時間で従来の10HzでのrTMSを37.5分と治療効果に差がないことがわかりました。
【うつ病患者へのシータバースト法vs高刺激rTMSの有効性:ランダム化非劣性試験】
これによりaccelerated-TBS治療という形で、効率的に短期集中治療が行えるようになり、当院でもこちらの方法で短期集中治療を行っています。
1日に何回まで刺激が可能?
それでは、1日に何回までの刺激が可能でしょうか。
アメリカでのaccelerated-tmsでは、1週間に50回のセッションを上限として行うことが多いです。
1回のセッションあたり600発の刺激を加えているため、1週間で30,000刺激となります。
現在の日本でのrTMS治療ガイドラインの上限15,000刺激となっているため、アメリカではその倍になります。
日本ではここまでの集中的な治療は行えない状況にあります。集中的な刺激は、けいれん発作を誘発するリスクを高めるためです。
ですから現実的には、1日3回×5日×2週間で、合計30セッションを行っていくことが多いです。
当院でのaTBS法
当院では1回のセッションを600~1200発まで刺激可能としていますので、患者様の状態をみながら1日2回でアレンジすることもあります。
当院がこのようなアレンジを加えている根拠としては、3倍量の1800発で行うprolong-iTBSでは良好な治療成績が報告されているためです。
ですから当院では、通常のTBSでは3回までの1800発、倍量TMSでは2回までの2400発を1日の上限としています。
インターバルは最低30分、理想は1時間とっています。
accelerated-tmsのエビデンス
論文について詳しくは、【うつ病でのaccelerated-TMS:システマティックレビューとメタ解析】をご覧ください。
a-tmsについての研究は、ヨーロッパのベルギーを中心にはじまりました。
うつ病の希死念慮のある患者さんにおいてaccelerated-tbsを行ったところ、TMS治療の安全性と忍容性、希死念慮の軽減が報告されました。
2016年にRCTで、左DLPFCに対するa-TBSが1日5セッション×4日の計20セッションで、刺激後2週間で明らかな有効性が示されました。
【薬物抵抗性うつ病でのaccelerated-iTBSについて】
そして2018年には、a-TMSとa-TBSを比較した臨床試験が発表され、臨床効果の違いが認められませんでした。
超短期集中治療のエビデンス
また2020年4月には、スタンフォード大学よりSAINTプロトコール(Stanford Accelerated Intelligent Neuromodulation Therapy)と呼ばれる1日10回のi-TBSセッションを5日連続で50セッションを集中治療の報告がなされました。
それによれば、21人中19人(90.48%)という衝撃の寛解率が報告され、安全性も問題ないという結果となっています。
TMS治療をご検討の方へ
短期集中のTMS治療は、その治療適応を正しく判断する必要があります。
TMS治療では副作用は少なく、重篤な副作用であるけいれん発作も稀とは言われています。
ですが集中的に高頻度刺激をあてることで、そのけいれん発作リスクは高まります。
また短期集中治療を求めている患者さんは、受験生などの若い方、社会的に活躍されている方も少なくなく、bipolarity(双極性)には注意が必要です。
当院には10名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師4名のみ(2021年9月現在)が担当させていただきます。
TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場に立ってご相談させていただきます。
当院では、週末や長期休暇を利用して短期集中治療を受け付けており、遠方の方はTMS専属医師による無料電話相談も受け付けています。
TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください。
週末集中TMS治療について 当院でのTMS症例(短期集中)執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了