青年期および若年成人の注意欠陥多動性障害(ADHD)の治療における経頭蓋磁気刺激(TMS):パイロット研究
こちらの論文は、
のページに引用しています。
右DLPFC高頻度刺激はADHDに効果なし
こちらの論文は、右DLPFCに対する高頻度刺激を行うことで、治療効果が期待できるかを探索したパイロット研究になります。
2009年のRCTでポジティブな結果が認められ、それに続いて行われた研究になります。
こちらの研究では、実刺激も偽刺激も改善傾向が認められましたが、どちらも効果に差がなかったという結果となっています。
主要な評価項目はICGですので、治療効果の印象としての変わり方に変化がないということになります。
またADHDのスコアも同様で、前研究で効果が示された右DLPFC高頻度刺激の効果は否定的とされました。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、大脳皮質に非侵襲的に磁気パルスを与え、神経細胞を脱分極させる医療機器である。
我々は、注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断された若年者を対象に、その安全性と有効性を検証した。
方法
経頭蓋磁気刺激を右前頭前野に10Hzで、観察された運動閾値の100%で、1回あたり2000パルス、2週間かけて10回のコースで行い、偽刺激対照クロスオーバーデザインを採用した(n=9)。
実刺激期間と偽刺激期間の間には、1週間の無処置期間を設けた。
TMSの安全性は、試験のベースライン、中間点および終点において、連続聴力検査、神経心理学的検査および脳波検査(EEG)によって評価した。
有効性は、CGI-I(Clinical Global Impression-Improvement)スケールの変化を主要評価項目とし、副次的にADHD-IVスケールの変化によって評価した。
結果
経頭蓋磁気刺激は、重篤な有害事象はなく、有害事象による中止もなく、安全であることがわかった。
ランダム化された被験者の全員が全コースのセッションを完了した。
聴覚閾値や脳波評価には有意な変化はなかった。神経心理学的検査では、実刺激群と偽刺激群との間に有意差はなかった。
臨床的な全体の改善の印象とADHD-IV尺度には、試験期間(実刺激と偽刺激の併用;P<0.01)を通じ、全体的に有意な改善が見られたが、実刺激期間と偽刺激期間での変化には差がなかった。
結論
経頭蓋磁気刺激は、このパイロット試験において重篤な有害事象は観察されず、安全であることがわかった。
症状の改善は、本試験の全段階で認められたが、TMSの実刺激と偽刺激との間には差がなかった。
臨床的に重要な効果については、さらに大規模な対照試験で評価する必要がある。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年4月3日
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