反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)によるアルコール依存症の治療
こちらの論文は、
のページに引用しています。
左DLPFC高頻度刺激は効果ははっきりしない
こちらの論文では、アルコール依存症の患者さんでの左DLPFC高頻度刺激の影響を調べた論文となります。
結果としては、左DLPFCをターゲットに高頻度刺激を行っても、アルコールの渇望や気分の安定に対して明らかな効果は確認できませんでした。
さらにこちらでは、注意の瞬き(Attentional Blink)について調べています。
注意の瞬きとは、連続して2つの刺激を与えたときに、2つ目の刺激を検出できる可能性が低下してしまう現象のことをいいます。
一般的に、情動的な刺激であったほうが検出率は高まることがわかっています。
TMS治療を行った群では、アルコール関連の写真の検出力が低下することが、この研究で示唆されています。
つまり情動的な反応が、TMS治療によって抑えられている可能性があります。
19名の患者さんでの研究になるので、左DLPFC高頻度刺激が無効とは結論付けられません。
アルコール依存症に対するTMS治療の最適なターゲットと刺激方法は、さらならる研修がまたれます。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
神経画像研究により、アルコール依存症患者は腹側線条体にドーパミン作動性の機能障害を示し、これがアルコール渇望と関連していることがわかっている。
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、うつ病に対する有望な新しい治療法として導入されたが、数ある神経生物学的メカニズムの中でも線条体ドーパミン系を刺激することが可能である。
本研究の目的は、アルコール依存症の女性を対象に、左背外側前頭前皮質への高頻度rTMSが渇望と気分に与える影響を、偽刺激と比較して検討することであった。
さらに、中性、感情、アルコールに関連した内容の写真に対する注意の瞬き(AB)パラダイムへの影響を証明した。
方法
19名のアルコール依存症の女性患者を、左DLPFCへの高頻度rTMS(20Hz)を10日間行う群(n=10)と、偽刺激を10日間行う群(n=9)にランダムに割り付けた。
アルコール渇望はObsessive Compulsive Drinking Scaleで判定し、抑うつ症状はHamilton Depression Rating ScaleとBeck’ Depression Inventoryを用いて登録した。
ABパラダイムのために、年齢を合わせた対照群を調査した。
結果
アルコール渇望や気分に関して、両群間に有意な差はなかった。
ABパラダイムでは、実刺激を受けた患者は、偽刺激を受けた被験者や対照被験者と比較して、アルコール関連のT2ターゲットを誤って検出した。
要約
実刺激高頻度rTMSの後、渇望や気分などの臨床的パラメータには偽刺激との差はなかったが、ABパラダイムにおいて、実刺激を受けた群と偽刺激を受けた群および対照者の間に、実刺激を受けた後、アルコール関連の画像に対するAB効果が増加するという興味深い差が見られた。
これらの知見を再現し、臨床および神経生理学的データと関連付けるためには、さらなる研究が必要である。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年7月2日
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