カフェインは大脳皮質の興奮性の測定に影響を与えない
こちらの論文は、
のページに引用しています。
濃いコーヒー1杯くらいは健常人に問題なし
こちらの論文は、運動野の皮質興奮性に与えるカフェインの影響を調べた研究になります。
体重あたり3mgですから、50㎏の方で150mg程度のカフェインをとっても、運動野の皮質興奮性には影響がないことが示されています。
カフェインは覚醒方向に働くはずなので、高頻度刺激など興奮性プロトコールのTMS治療であれば、その効果は高める可能性があります
その一方で、けいれんリスクなどが上がってしまわないかが懸念されます。
こちらの論文では、運動野の皮質興奮性のカフェインでの変化を調べることで、もっとも脳の興奮閾値が低く、反応しやすい場所での影響をみています。
結果として皮質興奮性に影響しないことが判明し、1杯の濃いコーヒーを飲んだからといって、けいれんリスクが高まることはないということがわかります。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
プラセボ対照二重盲検試験において、運動閾値、短間隔皮質内抑制(SICI)、皮質内促進(ICF)、cortical silent periodに対するカフェインの効果を評価する。
方法
健康な非喫煙者11名を対象に、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いて、運動閾値(安静時、RMTおよび活動時、AMT)、異なる条件刺激強度(60、70、80、90%AMT)でのSICIおよびICF、130、150および175%AMTでのcortical silent period、および110、125および150%RMTでの安静時の運動誘発電位の大きさを測定した。
測定は、カフェインレスコーヒーを1杯飲んだ後に繰り返し行った。
別の日には、カフェイン(3 mg/kg体重)を含むカフェインレスコーヒーを1杯飲む前と後に測定を行った。
実験の前後に血清中のカフェイン濃度を測定した。実験の実施とデータの評価は、実験条件を伏せて行った。
結果
すべてのパラメータの反復測定の結果は、各日の実験を比較しても、カフェイン群とプラセボ群を比較しても同様であった。
結論
濃いコーヒー1杯分の濃度のカフェインは、TMSによる運動野の興奮性測定に大きな影響を与えない。
健常対照者においては、本TMS研究で評価したパラメータを調査するTMS実験のデザインは、カフェインの影響を考えて調整する必要はない。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年11月6日
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