心理療法に間欠的シータバースト刺激(iTBS)を追加してニコチン依存を改善できるか?パイロット研究の結果

こちらの論文は、

のページに引用しています。

心理療法+iTBSは有効?

こちらの研究では、ニコチン依存症の心理療法にiTBSを4回加えたときに、治療効果が変化するかを探索した研究になります。

依存症では左DLPFCに対する高頻度刺激で渇望が軽減することがいわれてきましたが、今回の研究では認められませんでした。

ただ3か月の時点では禁煙率が高まることが示されており、中程度の効果が報告されています。

従来の心理療法に加えてiTBSを行うことで、効果が認められる可能性が示唆されています。

ただ4回という少ない刺激回数で症例も少なく、有効性について確たることはいえません。

論文のご紹介

ニコチン依存症に対して心理療法にTMS治療を加えた場合についての論文です。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に訳して引用させていただきます。

喫煙は世界的にみて主な死亡原因である。

喫煙をやめることで、喫煙前のレベルまで寿命を延ばすことができる。

無支援の試みは効果がないことが多く、認知行動療法(CBT)やニコチン置換療法、薬物療法の必要性が強まっている。それでも再発率は高い。

最近、前頭前野への経頭蓋磁気刺激により、再発を予測するニコチン渇望に変化があったことが示された。

パイロット研究では、CBTの追加治療として間欠的シータバースト刺激(iTBS)を4回行うことで、ニコチン渇望が減少し、長期的な禁煙(3、6および12ヵ月)が改善するかどうかを検討した。

喫煙者を刺激群(n=38)または偽刺激群(n=36)に無作為に割り付けた。

渇望の減少は見られなかったが、刺激群では3ヵ月後に高い禁煙率を示すことができた。6ヵ月後と12ヵ月後の禁煙率には有意な差は見られなかった。

しかし、12ヵ月後の結果は、この時点での2群間の離脱率に有意な差があるため、慎重に解釈しなければならない。

我々は、中程度のニコチン依存に対するiTBS追加治療の有益な効果を示す最初のエビデンスを提供した。

しかしながら、iTBSのセッション数が少なかったために、より長い効果が得られなかった可能性がある。

うつ病の治療と同様に、iTBSの維持セッションを行うことで、より持続的な効果が得られるかもしれない。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年3月6日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京TMSクリニック® 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について … 続きを読む 【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: