【うつ病88】70代女性

プロフィール

  • 治療期間:【急性期】X年/7月~X年/8月の32日間
  • 主訴:不安が強い、食欲不振、倦怠感、思考停止、腰痛、両足裏の鈍痛
  • TMS治療の目的:抑うつ状態の改善
  • TMS治療プロトコール:右低頻度rTMS(1,800発/回)を30回

これまでの経過

他院精神科に通院中の患者様です。

食欲低下を伴う抑うつ状態、不安、疼痛等を認めるため、当院でのTMS治療を希望されました。

テルミサルタン(降圧薬)、プラバスタチン(抗コレステロール薬)、エビリファイ(抗精神病薬)、デュロキセチン(抗うつ薬)、ミルタザピン(抗うつ薬)、ラックビー(整腸薬)、酸化マグネシウム(便秘薬)を服薬されています。

亜鉛のサプリメントも服用中とのことでした。

TMS治療経過

うつ病88の心理検査の結果をご紹介します

※HAM-D・MADRSは医療スタッフが評価するうつ症状心理検査で、SDSは患者さん本人の自覚症状を評価するうつ症状心理検査

抑うつ状態を改善するため、右低頻度rTMS(1,800発/回)を30回行いました。

腰痛や足の痛みがおありとのことで、治療に際しては座席のリクライニングやクッション等を利用し、患者様と相談しながら姿勢の調整を重ねました。

TMS10回終了時点では抑うつ的な表情で、足裏の痛みや腰痛の訴えもございました。

特段変化もなく、常に不安を抱えているご様子でした。

今後症状が改善する可能性はありましたが、磁気刺激に対する反応が鈍かったことから脳が萎縮している可能性もあり、その場合は治療効果が乏しくなることを医師より説明。

遠方からの通院を決断いただいた背景もあり、患者様とご家族様の希望で治療を継続することとなりました。

TMS20回終了時点でも「腰と足が痛い」との訴えはございましたが、患者様の表情は徐々に和らいできていました。

服薬により睡眠もとれており、食事も「前より食べられるようになってきた」とのお話がございました。

TMS30回終了時には「落ち込みは減ったが、痛みは変わりない」とお話されていました。

食欲は以前より増したようでした。

遠方から1か月間の滞在に「長かったです」とこぼされるも、お話の際には笑顔も見られました。

心理検査上ではSDSの回答不備があり採点不可となりましたが、HAM-DとMADRSにおいて症状の改善が認められました。

当院でのTMS治療は終了し、他院での薬物療法を継続することとなりました。

症例のまとめ

近隣の宿泊施設にご滞在いただき、短期集中的に30回の治療を終えられました。

滞在期間の都合により週5日以上の通院となるハードなスケジュールでしたが、患者様とご家族様とが二人三脚となって治療を完遂されました。

また、腰や足の痛みなど治療上の困難もある中で、ご家族様が患者様を親身にケアし、励まされていたことも、治療の大きな一助となっていました。

TMS治療によって症状に改善が見られた症例ではありますが、これらの結果は治療を継続された患者様とご家族様の努力あってのものと思います。

TMS治療に携わるスタッフとして、治療意欲を支える役割について見つめ直す機会となりました。

また高齢の方は、治療効果が遅れてついてくることもあるため、今回も徐々に治療効果がみとめられてますので、治療後に改善が進むことを期待しています。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2022年12月23日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

【FDA承認のプロトコル】慢性疼痛に対する磁気末梢刺激の効果

慢性疼痛とTMS治療に関しては下記をご参照ください 慢性疼痛(線維筋痛症)とTMS治療 慢性疼痛に効果が期待できる磁気末梢刺激とは? 慢性疼痛に対する磁気末梢神経刺激(mPNS)が2023年8月25日にFDA*で承認され… 続きを読む 【FDA承認のプロトコル】慢性疼痛に対する磁気末梢刺激の効果

投稿日:

当院のTMS治療症例数(2023年12月~2024年11月)

治療症例数 期間:2023年12月~2024年11月 症例数:771名 771症例のうち適応は569例 東京横浜TMSクリニックでは、ご予約の段階で明らかな適応外の場合、受付スタッフによりご説明させていただきます。 その… 続きを読む 当院のTMS治療症例数(2023年12月~2024年11月)

投稿日:

TMS治療の効果と治療プロトコール

効果的なTMS治療とは? TMSのプロトコールをどのように調整すれば効果が期待できるか、様々な研究がなされています。 近年では様々な治療プロトコールが開発されており、より短時間で効果的な治療方法が模索されています。 こち… 続きを読む TMS治療の効果と治療プロトコール

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日: