不安障害が合併したうつ病に対するrTMSの有効性

こちらの論文は、

のページに引用しています。

うつ病に合併する不安障害に有効

こちらの論文は、不安障害が合併しているうつ病患者さんに対するrTMS治療の効果を示した論文になります。

ランダムに偽刺激と実刺激をふりわけて比較してはいませんが、不安障害の合併の有無で治療成績を比較した場合に、寛解率は差がなかったという結論となっています。

うつ病に対するTMS治療の効果は既に明らかになっていますので、不安障害が伴っていてもTMS治療が有効であることが示唆されます。

この試験では、HAM―Aなどの不安障害の心理検査の改善なども認められていて、不安そのものも軽減していることがわかります。

248名の治療抵抗性うつ病患者さんでの結果になりますので、不安障害であってもうつ状態であるならば、TMS治療の効果は期待することができます。

こちらの論文などをもとに不安障害の合併したうつ病に対して、欧州ではTMS治療機器がCEマーク認証(医療機器としての認証)をうけています。

論文のご紹介

うつ病と不安障害の論文をご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

不安障害の合併は、一般的にうつ病患者の治療成績の低下と関連している。

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は治療抵抗性のうつ病に有効であることが示されているが、不安障害が合併したうつ病患者に対してrTMSを検討した研究はほとんどない。

本研究では、治療抵抗性の大うつ病性障害(MDD)と不安障害が合併した患者におけるrTMSの有効性を検討することを目的とした。

方法

本研究では、rTMSによる治療を受けた治療抵抗性MDD患者248名を対象とした。

そのうち172名は1つ以上の不安障害を合併していたため、不安障害を合併していない患者と治療成績を比較した。

結果

不安障害を合併している患者も合併していない患者も、rTMS治療後に抑うつ評価の改善が認められ、寛解率には群間で有意な差はなかった。

不安障害を合併する患者では、23.3%が寛解の基準を満たし、39.5%が反応の基準を満たした。

不安障害の診断ごとに、HAM-A、HAM-D21、MADRSおよびZUNGスコアの有意な低下が認められた(いずれもp = <0.001)。

限界

本研究は偽対照試験ではないため、プラセボ反応率は不明である。

また、患者は民間の精神科医から紹介されたものであり、すべてのうつ病患者を代表するものではない。

結論

本研究は、不安障害を合併している大うつ病性障害の患者に対して、rTMSが有効な治療法であることを示している。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年5月29日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

【FDA承認のプロトコル】慢性疼痛に対する磁気末梢刺激の効果

慢性疼痛とTMS治療に関しては下記をご参照ください 慢性疼痛(線維筋痛症)とTMS治療 慢性疼痛に効果が期待できる磁気末梢刺激とは? 慢性疼痛に対する磁気末梢神経刺激(mPNS)が2023年8月25日にFDA*で承認され… 続きを読む 【FDA承認のプロトコル】慢性疼痛に対する磁気末梢刺激の効果

投稿日:

当院のTMS治療症例数(2023年12月~2024年11月)

治療症例数 期間:2023年12月~2024年11月 症例数:771名 771症例のうち適応は569例 東京横浜TMSクリニックでは、ご予約の段階で明らかな適応外の場合、受付スタッフによりご説明させていただきます。 その… 続きを読む 当院のTMS治療症例数(2023年12月~2024年11月)

投稿日:

TMS治療の効果と治療プロトコール

効果的なTMS治療とは? TMSのプロトコールをどのように調整すれば効果が期待できるか、様々な研究がなされています。 近年では様々な治療プロトコールが開発されており、より短時間で効果的な治療方法が模索されています。 こち… 続きを読む TMS治療の効果と治療プロトコール

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

「冬になると気分が落ち込む」「寒さでやる気が出ない」と、冬になるたびに変化するご自身の体調に戸惑っていませんか? 不調を感じているご本人や、ときには周囲からも「寒さが苦手なだけだろう」と思われがちな冬の不調。 実は、冬季… 続きを読む 冬の寒さがメンタルに影響?「冬季うつ」の原因と対策

投稿日:

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日: