治療抵抗性大うつ病性障害患者における経頭蓋磁気刺激(TMS)の多施設・自然主義的・観察研究:追跡期間1年での効果の持続性
こちらの論文は、
のページに引用しています。
TMS治療は45%の寛解と70%弱の治療反応が持続的に期待可
こちらの論文では、実際の臨床現場でのTMS治療の効果の持続を確認したものになります。
42の施設で行われており、そのうち76%の32施設は民間クリニックになります。
ニューロスターによる通常のrTMS治療プロトコールとなっており、左高頻度刺激91.2%となっています。
抗うつ剤による維持療法を行ったり、症状の悪化が認められた場合にはTMS再刺激を行ったりと、通常の臨床治療を行ったうえで1年間観察し、その治療効果の持続を評価しました。
これによれば、寛解率は45.1%、反応率は67.7%と1年後も維持できており、治療後時間がたっても状態は維持できていることが示されています。
こちらはお薬が効果を示さない薬物抵抗性うつ病での結果になりますので、それを考えれば非常に良好な成績と考えられます。
薬物抵抗性うつ病では、さらに薬物療法を続けても効果は期待しにくくなっていくことが分かっています。
TMS治療はそのような患者さんにとって、有用な治療選択肢になります。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
目的
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、抗うつ薬による薬物療法が効かない患者に対する有効かつ安全な急性期治療法である。
しかし、その長期的な持続性を検討した研究はほとんどない。本研究では、急性期治療後の自然主義的な臨床現場におけるTMSの長期的有効性を評価した。
方法
抗うつ薬による薬物療法が効果を示さない、単極性非精神病性大うつ病性障害(DSM-IV臨床基準)の一次診断を受けた成人患者を対象に、42の臨床現場でTMS治療を実施した。
2,157人の患者が急性期TMS治療のコースを終了し、52週間以上の追跡調査に同意した。
評価は3、6、9および12ヵ月後に行われた。研究は2010年3月から2012年8月までの間に実施された。
結果
TMS治療前のベースラインと比較して、急性期治療終了時におけるClinical Global Impressions-Severity of Illnessスケール(主要アウトカム)、9項目のPatient Health QuestionnaireおよびInventory of Depressive Symptoms-Self Report(IDS-SR)の平均総得点は統計学的に有意に減少し(いずれもP<0.0001)、追跡調査期間中も持続した(いずれもP<0.0001)。
急性期治療終了時に寛解を達成した患者の割合は、長期追跡終了時にも同様であった。
急性期治療終了時にIDS-SRの奏効基準または寛解基準を満たした120人の患者のうち、75人(62.5%)が長期フォローアップ期間中も奏効基準を満たしていた。
急性期TMSのテーパリングの大部分が終了した最初の1ヵ月後、93人の患者(36.2%)がTMSの再導入を受けた。
このグループでは、TMS治療の平均(標準偏差)日数は16.2(21.1)日であった。
結論
12ヵ月以上にわたる追跡調査で、統計学的にも臨床的にも意味があるTMSの急性期での効果の持続性が示された。
これは、抗うつ薬の継続投与を実施し、症状の再発に対してTMSによる再治療を受けるという実用的なレジメンの下で観察された。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年2月13日
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