年齢は大うつ病性障害の低頻度経頭蓋磁気刺激の効果予測因子
こちらの論文は、
のページに引用しています。
若い人のうつ病の方がTMSは有効
こちらの論文は、抗うつ剤の補助としての右低頻度rTMS治療がどのような患者さんに有効なのかを調べた研究になります。
評価者をしっかりと盲検(どちらの治療群かわからないようにしている)にした研究なので、信頼できる研究になります。
こちらによれば、抗うつ剤の増強目的でTMS治療を行うにあたっては、右低頻度刺激では若い人には効果が期待できるという結果となっています。
反対にいえばそれ以外では、少なくとも難治例では効果が期待しにくいという結果となります。
うつ病に対しては、左高頻度刺激の方がエビデンスがそろっており、実際の臨床実感としても左高頻度刺激の方が改善率が高いように思います。
明らかな躁エピソードがある場合などでは右低頻度刺激を行いますが、やはり基本は左高頻度刺激の方が良いのかもしれません。
その他にも高齢者では若年者より効果が劣ってしまうことはその他の研究でもしめされており、若い人の方が効果が期待できることは確実と思われます。
高齢者では脳が委縮していく傾向にありますから、TMS刺激がうまく入らなくなるのはイメージとしても理解しやすいかと思います。
サマリーのご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。
以下、日本語に訳して引用させていただきます。
背景
経頭蓋磁気刺激(TMS)の大うつ病性障害に対する有効性は、現在のところ主に高頻度(>1Hz)刺激(HF-TMS)で研究されている。
しかし、低頻度TMS(LF-TMS)を用いた有効性研究のいくつかで、HF-TMSと比べてよりよい忍容性で同等の反応率が得られている。しかし、エビデンスは混在しており、議論の余地がある。
方法
無作為化2アーム比較臨床試験であった。34人の大うつ病性障害患者が、薬物治療の補助治療として、無作為に右背外側前頭前野への20セッションの実TMS治療または偽(シャム)TMS治療に割り振られた。
刺激パラメータは、60秒間に運動閾値の110%の強度で20トレインで、頻度は1Hzであった。盲検にされた外部評価者がハミルトンうつ病評価尺度を判定した。
結果
両治療群で有意な改善が見られたが、両者の間で統計学的差はみとめられなかった。
実TMS治療群で、年齢は試験終了時のうつ症状の改善と逆相関した(r=-0683 p=0.002)。ハミルトン評価尺度におけるスコア低下率は、45歳未満の患者で、それ以上の年齢の患者と比較して大きかった。(41.3 +/- 22.6 vs. 15.1 +/- 15.8; t=2.8 df=16, p=0.011)
これら実TMS治療のサブグループでは、うつ病性障害の既往歴でも現在のエピソードの治療抵抗性の指標でも有意な違いはなかった。
限界
小規模であり、難治性症例が多い。
まとめ
本研究では、抗うつ薬の補助治療としてのLF-rTMSは若年患者にだけ有効であった。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年1月20日
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