前頭前野に対する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)における抗うつ反応の陽性予測因子

こちらの論文は、

のページに引用しています。

TMS治療は睡眠障害の目立つうつ病に有効

こちらの論文では、TMS治療の治療反応予測に関係するファクターを調べています。

これによれば、強い睡眠障害が治療反応に予測する因子であり、睡眠障害がひどいほうがTMS治療の効果が期待しやすいことがわかります。

この研究では左DLPFCに対する高頻度刺激を行っていますが、脳を活性化させるために眠気が強まる方が少なくありません。

TMS治療を行っていると睡眠の改善をおっしゃる方も多いため、私たちの臨床的な印象とも一致しています。

またそれ以外としては、お薬に対する治療抵抗性が低いことやエピソード期間が短いことが予測因子となる可能性がありますが、これも当たり前といえば当たり前かもしれません。

薬に対して少しは反応した方や、うつ状態がそこまで長く続いていない方の方が、TMS治療での効果は期待しやすいと言えます。

論文のご紹介

DLPFCに対するうつ病TMS治療での抗うつ効果の反応予測因子についての論文です。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

反復的経頭蓋磁気刺激(rTMS)は脳刺激法であり、近年、抗うつ療法として研究されてきた。

しかし、rTMSアウトカムの臨床的に有用な予測因子については、ほとんど合意が得られていない。

そこで、本研究の目的は、70人のうつ病患者の大規模サンプルにおいて、特定の伝記学的、臨床的および心理病理学的パラメータがrTMSに対する抗うつ反応と関連しているかどうかを明らかにすることであった。

左側背外側前頭前野に対してrTMSで治療された大うつ病性障害患者70人を対象にロジスティック回帰分析を行い、うつ症候群の様々な領域、エピソード持続時間、治療抵抗性の程度およびCORE基準という変数の予測値を検証した。

治療効果は、初期ハミルトンスコア(HAMD)が50%減少したものと定義された。

2週間の治療後、21%の患者がrTMSに反応を示した。バイナリロジスティック回帰モデルは、応答者の86.7%および非応答者の96.4%を最終応答群に正しく割り付けた。

このモデルでは、高レベルの睡眠障害がrTMSに対する治療反応の有意な予測因子であった。

また、治療抵抗性のスコアが低いことと、エピソードの期間が短いことも正の予測因子であった。

これらの知見は、特に顕著な睡眠障害がrTMSの治療効果の重要な臨床的予測因子である可能性を示す新たな証拠を提供している。

導き出されたモデルの予測値を検証するためには、前向きrTMS研究が必要である。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年2月13日

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