大うつ病性障害の非治療抵抗性患者における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の臨床的有効性に関する系統的文献レビュー

こちらの論文は、

のページに引用しています。

お薬が1回でも効果なければTMS治療を行う価値あり

こちらの論文は、TMS治療の費用対効果を調べた論文になります。

アメリカは民間保険で、日本のように皆保険制度ではありません。

お金を持っている人が良い医療を受けられるのは当たり前で、収入により入れる医療保険も大きく異なります。

保険会社は営利企業ですから、この論文のような費用対効果の研究がシビアになされます。

現在のアメリカでは、治療抵抗性うつ病の定義は4回以上の抗うつ剤で効果不十分例とされていて、ほとんどの保険会社でのTMS治療の保険適用の基準となっています。

こちらの論文では、1回以下の抗うつ剤での治療がうまくいかなかった場合は、TMS治療は費用対効果に優れるという結論となっています。

アメリカでのTMS治療は、1セッション200ドル~400ドルくらいが標準的になります。

日本では1~3割の自己負担になりますから、3割の方にとっては1セッション60~120ドル程度であれば、TMS治療の方が経済的にもメリットがあるといえそうです。

このようにTMS治療は、短期集中治療によりトータルでみれば経済的でもある可能性があります。

論文のご紹介

非治療抵抗性うつ病のTMS治療の費用対効果を調べた論文

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

治療抵抗性のある患者(少なくとも4回の投薬試験)における反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の臨床的有効性は十分に受け入れられているようであり、米国最大の支払者の多くで保険適用方針が形成され、rTMSが使用されている。

しかし、投薬試験に失敗した回数が1回以下の患者におけるrTMSの使用については、あまり知られていない。

本分析の目的は、1回以下の投薬試験を受けた患者におけるrTMSの臨床効果を明らかにすることであった。

方法

文献のシステマティックレビューを実施し、1回以下の投薬試験でrTMSの使用を扱ったすべての論文を特定した。

すべてのタイプの研究デザインが含まれ、GRADEとCEBMを用いてエビデンスの質と強度を評価した。

2000年から現在までの査読付き論文の検索を行った。すべての言語を考慮した。電子データベースを検索し、これにはPubMedおよびEBSCOが含まれた。

エビデンス評価のウェブサイトも検索され、これにはコクラン、NICE、AHRQおよびICERが含まれていた。

さらに、rTMSを使用している専門学会の臨床ガイドラインも検索した。特定された論文の参照セクションのハンドサーチも実施された。

結果

電子情報源およびその他の情報源からは、重複を除去した後、165件の論文が同定された。

22本の論文が適格性を評価され、最終的に10本の論文がシステマティックレビューに含まれ、評価された。

6つの論文が高品質(CEBM/GRADE:1c/B)と評価され、1回以下の投薬試験後の患者に対してrTMSの使用が臨床的に有効であることを示した。

さらに4つの試験では、1回以下の投薬試験後の患者に対してrTMSの効果が認められたが、質は低かった。

結論

1回以下の投薬試験を受けた患者に対してrTMSの使用を検討すべきである。

米国の支払者は、これらの患者へのrTMSの使用を含めるように保険適用方針を改定することを検討すべきである。

【お読みいただいた方へ】
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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年2月25日

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