MCI患者に対するドネペジルの投与:48週間のランダム化プラセボ対照試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
MCIにドネペジルは効果期待できない
こちらの論文は、MCI(軽度認知機能障害)の患者さんに対してのドネペジル(商品名:アリセプト)の認知機能への効果を調べたRCTになります。
およそ1年にわたって評価していますが、結論として認知症治療薬のドネペジルを使っても、明らかな認知機能全体に対するプラスの効果は認められなかったとなっています。
有害事象に対しては、10%ほど実薬の方が多くなっており、吐き気などの胃腸障害が多いドネペジルの副作用の方がデメリットとなりえます。
このようにMCIに対しては、認知症治療薬は推奨はされておらず、物忘れなどがでてきても何とか日常生活ができている方は、認知症治療薬は使わずに様子を見ていくことが多いです。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
軽度認知障害(MCI)に対するコリンエステラーゼ阻害剤による治療は、症状を改善する可能性がある。
方法
本試験は、多施設共同ランダム化プラセボ対照試験であり、MCIの被験者は、3週間のプラセボ投与期間の後、48週間のドネペジル(5mg/日を6週間、その後10mg/日を42週間)またはプラセボを二重盲検で投与された。
主要評価項目は、48週間投与後の修正アルツハイマー病評価尺度(ADAS-Cog)および臨床的認知症評価尺度(CDR-SB)のベースラインからの変化であった(修正ITT分析)。
副次評価項目として、認知機能、行動、機能を評価した。
結果
有効性に関する主要評価項目を両方とも達成することは出来なかった。
試験終了時には、修正ADAS-Cogスコアがわずかながらも有意に低下し、ドネペジルが有効であることが確認された。
CDR-SBおよび副次評価項目については、いずれの群もベースラインからの変化はほとんど認められなかった。
第12週を除くすべての時点で、Patient Global Assessmentスコアはドネペジルに有利な結果となった(p < or = 0.05)。
Perceived Deficits Questionnaireのスコアは、24週目にドネペジルが優位に立った(p = 0.05)。
また、Clinical Global Impression of Change-MCIスコアは、6週目のみドネペジルが優位になった(p = 0.04)。
有害事象は概ね軽度または中等度であった。
ドネペジル投与群では、プラセボ投与群の8.3%と比較して、有害事象による治療中断者が18.4%と多かった。
結論
ドネペジルは、認知機能の主要評価項目において、わずかながらも有意な改善を示したが、全般的機能の主要評価項目においては変化がなかった。
全体的な障害、認知、機能に関する他のほとんどの指標は改善されなかったが、これはおそらくこれらの指標がMCIの変化に鈍感であるためである。
主観的な評価は、被験者がドネペジルの投与による効果を認識していることを示唆している。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年7月29日
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