【気分変調症④】40代女性
プロフィール
- 治療期間:【急性期】X年/8月~X年/10月の55日間
- 主訴:気分の落ち込み、午前中が辛く夕方からよくなる、動悸
- TMS治療の目的:抑うつ状態の改善
- TMS治療プロトコール:倍量iTBS(1,200発/回) 30回
これまでの経過
他院精神科に通院歴のある患者様です。20年前の初診以来、抑うつ状態の寛解と再燃を繰り返しており、数度の通院歴があります。
最終受診は1年前になります。
抑うつ状態の再燃、再発を繰り返しているため、当院でのTMS治療を希望されました。
治療開始時点で服薬はございませんでした。
TMS治療経過
※HAM-D・MADRSは医療スタッフが評価するうつ症状心理検査で、SDSは患者さん本人の自覚症状を評価するうつ症状心理検査
抑うつ状態を改善するため、倍量iTBS(1,200発/回)を30回行いました。
TMS10回終了時、「最初の数日苛立ちがあった。治療継続していつも通りになった感じ」とお話がございました。患者様のご認識としては、元々の性格と、夏季休暇が重なっていたことが主要因とのことでした。それ以外の気分変化は見られなかったため、苛立ちの憎悪に留意しながら治療を継続する方針となりました。
TMS20回終了時には「朝が辛いのはあまり変わらない」「うつっぽいのは以前よりは良くなったかもしれないんですけど」とのお言葉がございました。10回目以降苛立ちは落ち着いており、ご家族からは「むしろ少しよさそう」とお話があったようです。気分の波は残存しつつも、調子の良い時間が増えているご様子でした。
TMS30回終了時は「劇的に効果は実感出来ていないけど、保てるようにはできているのかなって思います」とご感想をいただきました。強い落ち込みはなく、物事への興味も戻ってきた とのことでした。「まだ完全でないが、薬なしでここまで改善できたことはよかった」とも口にされ、今後のためにご自身でも認知行動療法を学んでおられました。
心理検査の点数は治療前後で有意に減少し、抑うつ症状の改善が認められました。
当院でのTMS治療は終了し、再発時に治療再開を検討することとなりました。
症例のまとめ
週3日程度のペースで1日2回ずつ施術し、30回の治療を終えられました。
気分変調がベースにある抑うつ症状とのことで、治療初期は苛立ちや気分の波について様子を見ながらの治療となりました。回数を重ねるごとに抑うつ症状からくる落ち込みが減り、物事への興味も徐々に回復したご様子がございました。
ご症状の中でも抑うつ状態に対する部分的なアプローチでしたが、TMS治療により気分変調の波を軽減することができた症例となりました。
【お読みいただいた方へ】
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2023年1月26日
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