電気けいれん療法(ECT)後の再発予防における薬理学的戦略

こちらの論文は、

のページに引用しています。

ECT後の維持にリチウムと抗うつ剤の併用は有効

こちらの論文は、リチウムと抗うつ剤を併用することでの再発予防効果について調べたRCTになります。

抗うつ剤をECTの実施前から使っていくほうが治療効果が期待できることは示されていますが、再発予防効果に対しては、抗うつ剤の開始時期によって差がないことが示されています。

またリチウムが再発予防効果が期待できることも知られており、リチウムはECT中にはけいれん閾値を下げてしまうために使うことができません。

このためリチウムに加えて抗うつ剤を併用することで、再発予防効果が高まるかを確認しました。

さらにはその効果に、三環系抗うつ薬のノリトリプチリンとSNRIのベンラファキシンに違いがあるかを調べましたが、どちらも同等の効果が認められました。

このため抗うつ剤については、ECTと併用して使っていくことが望ましく、副作用が少ない新規抗うつ薬でも十分と考えられます。

論文のご紹介

ECT後の再発予防のための薬物療法の治療戦略をまとめた論文をご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

目的

電気けいれん療法(ECT)開始時に抗うつ薬を開始することでECT後の再発が減少するかどうか、また、ノルトリプチリン(NT)とリチウム(Li)を用いた継続的な薬物療法が、ベンラファキシン(VEN)とLiを用いた継続的な薬物療法と比べて、有効性や有害作用に違いがあるかどうかを明らかにする。

方法

急性ECT期に319名の患者を、中用量の両側ECTと高用量の右片側ECTの治療に無作為に割り付けた。

また、プラセボ、NT、VENの併用投与にも無作為に割り付けられた。

ECT後の寛解基準を満たした181名のうち、122名(67.4%)が第2期の継続的薬物療法に参加した。

NTまたはVENに先行して割り付けられた患者は、抗うつ薬を継続し、プラセボに先行して割り付けられた患者は、NTまたはVENに割り付けられた。

全患者にリチウムが追加投与され、再発または6ヵ月まで追跡された。

結果

ECTコースの最初に抗うつ薬を開始することは、ECT終了後に薬物療法を開始することと比較して、再発の割合や時期に影響を及ぼさなかった。

NTとLiの組み合わせは、VENとLiの組み合わせと比較して、再発や副作用の指標に違いはなかった。

高齢者は再発リスクの低下と強く関連していたが、急性期に実施されたECTの種類と薬剤耐性は予測できなかった。

施設全体では、50%の患者が再発し、33.6%がECTの6カ月後に寛解を継続し、16.4%が脱落した。

結論

ECT中に抗うつ薬を開始しても再発には影響せず、急性ECTコース中にLiを投与することには懸念がある。

ノルトリプチリンとVENは同等の寛解延長効果があったが、集中的に薬物治療したにもかかわらずECT後の再発率は相当なものである。

通常のECTにおける急な中止とは対照的に、ECTの漸減の影響を評価する必要がある。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年9月23日

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