線維筋痛症の倦怠感の改善に関するエビデンス:4週間のDLPFCに対するrTMSによるランダム化比較試験

こちらの論文は、

のページに引用しています。

左DLPFCが倦怠感と鎮痛効果があるかもしれない

こちらの論文は、線維筋痛症の患者さんに左DLPFC高頻度刺激を行ったRCTになります。

26名の患者さんを高頻度刺激と偽刺激にランダムで分けて、TMS治療の有効性を調べています。

このようにTMS治療によって、線維筋痛症の生活の質が改善する可能性が示されています。

うつ病と同じプロトコールで、20セッションをrMT120%の強度でおこなっています。

結果としては、身体的疲労度と全身疲労度については治療効果が認められました。

また痛みの強さの評価で30%以上の改善を認められる群が2.84倍高かったという結果となっています。

線維筋痛症患者さんにおいて、左DLPFC高頻度刺激で倦怠感の改善と鎮痛効果が期待できる可能性があります。

論文のご紹介

線維筋痛症での左DLPFCに対するTMS治療のエビデンスを紹介した論文です。英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

線維筋痛症は複雑な慢性疾患であり、現在有効な治療法はほとんどない。

有望な治療法の一つとして、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)がある。

これは非侵襲的な脳刺激技術であり、中枢神経系に影響を及ぼす疾患に有望である。

方法

線維筋痛症と診断された患者26名(実刺激群14名、偽刺激群12名)を対象に、左半球の背外側前頭前野(DLPFC)に高頻度(10Hz)のrTMSを照射し、その有効性を評価した。

参加者は、4週間連続で毎日(月曜から金曜)rTMSセッションを行う二重盲検の刺激プロトコルを受けた(合計20セッション;安静時運動閾値120%で75×4秒、10Hz)。

評価は、治療前、治療開始4週間後、および治療終了1カ月後に行った。

結果

混合モデルを用いた解析では、主要評価項目に群間差は認められなかった。

しかし、1ヵ月後の追跡調査では、多次元疲労度調査(Multidimensional Fatigue Inventory-20)の身体的疲労度(p=0.045)および全身疲労度(p=0.023)の尺度が、偽刺激群に比べて実刺激群で有意に改善したことがわかった。

また、レスポンダー分析では、痛みの強さの評価で最低30%の改善を達成する確率が、実刺激群で有意に高かった(2.84倍、p=0.024)。

結論

左DLPFCに高頻度rTMSを4週間毎日適用することで、線維筋痛症患者の有意な倦怠感の回復と、臨床的に意味のある鎮痛効果がより高い確率で誘導される。

これらの結果は、DLPFCに対するrTMSが線維筋痛症の治療に関連する可能性を示唆している。

意義

本研究では、左DLPFCに対するrTMSを4週間毎日行うことで、線維筋痛症の倦怠感を改善できるという証拠を示した。

この新たな知見は、線維筋痛症およびその関連疾患において、治療が困難な症状である倦怠感の緩和に対するTMSアプローチの有用性をさらに検討するきっかけとなる。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年5月1日

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