GW明けは要注意!「五月病」の原因と対処法
ゴールデンウィークが終わり、仕事や学校が再開される5月上旬。
「仕事に行きたくない」「学校が始まるのがつらい」と、連休明けにストレスを感じる方は少なくありません。
今回は、5月に不調を感じる「五月病」について詳しく解説します。
「五月病ってなに?」
「五月病にならない方法はある?」
など、五月病についての疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
目次
「五月病」とは?
5月の連休明けに心身のバランスを崩してしまった状態を、日本では「五月病」と呼ぶことがあります。
5月に不調を感じる方が多いことから、いわゆる総称として使われている言葉です。
この時期は、いろいろと社会生活の変化、気候の変化などが重なる時期です。
そして日本ではゴールデンウイークがありますから、なおさら変化を大きく感じてしまうのかもしれません。
もちろん医療機関で「五月病です」、と診断名が付くこともありませんが、心の調子をくずやすい時期として認識いただくと良いでしょう。
診断名として使われるのは?
実際に診断が付く場合は「適応障害」、もしくは「うつ病」とされることが多いでしょう。
「適応障害」
適応障害とは、新しい環境に適応できないことがストレスになり、心身に影響が現れ、生活に支障が出ている状態です。
「うつ病」
うつ病とは、脳の機能低下により心身に影響が出て、身体症状や精神症状が出ている状態です。
適応障害とうつ病の違いをざっくりとまとめると、下記のように言えるでしょう。
- 「環境へのストレス」が原因:適応障害
- 「脳の機能低下」が原因:うつ病
ただ、なかには環境の変化によるストレスが蓄積したことにより、脳機能が低下して、結果的にうつ病と診断される方もいます。
ご自身で判断するのは難しいので、不調を感じた際は早めに医療機関に相談することをおすすめします。
五月病の原因
「適応障害」「うつ病」のどちらにしろ、環境の変化によるストレスは心身の不調を引き起こす大きな要因となります。
- 新社会人の始まりや、社内での役職変更
- 新しい学校への入学や、クラス替え
- 子どもの入学や進学、受験などで、家庭全体の生活スタイルが変化する
など、4月は環境の変化が大きい時期です。
「新しい環境に溶け込まなければ!」と、気を張り続ける方もいるでしょう。
慣れない環境で過ごすうちに、心身の疲れを溜めてしまう人は少なくありません。
「環境の変化」と一口に言っても、深掘りしていくとその内容はさまざまです。
ここでは、この時期によくある具体的な原因を4つに分けて考えてみましょう。
環境や時間の使い方の変化
まず考えられるのは、やはり環境や時間の使い方の変化です。
慣れ親しんだ環境から新しい世界に飛び込むのは、ご自身にとってはいい変化でもストレスになり得ます。
ご本人に変化がなくても、夫や妻、子どもの生活スタイルに合わせて柔軟に対応しなくてはいけない場合もあるでしょう。
起床や就寝時間の変化、家を出る時間や帰宅時間の変化、人間関係の変化など、今までの生活との違いが大きいほど、慣れるまでには時間がかかるものです。
人間関係の悩み
環境の変化でよく耳にする困りごとが、人間関係の悩みです。
「苦手な人がいる」「今までの人間関係の居心地がよくて、新しい人たちとうまく付き合えない」など、初めて関わる人たちへの不安や不満はどうしても生まれがちです。
目標の喪失
新しい環境で、これからがスタート! というところで、目標を喪失してしまう方もいます。
- 就職活動や転職活動ですべてを出し尽くして、入社後のモチベーションが残っていない
- 昇進を目指して努力していた結果、昇進後の目標を見失ってしまった
- 大きなプロジェクトを達成して、仕事のハリがなくなった
など、目指してきた目標をクリアしたことで、気持ちが燃え尽きてしまう場合があるのです。
理想と現実のギャップ
自分が描いていた新生活と、現実の生活とのギャップも、ストレスの要因になります。
- 「こんなはずではなかったのに……」と考えてしまう
- 「自分には別の仕事が向いているのでは?」と、今の仕事に不満を感じる
- 「理想の自分」と「現実の自分」との差が激しい
新生活がスタートした直後はどうにか日々をこなしていても、5月の連休中に自分の生活を省みて「こんなはずでは……」と落ち込んでしまう方もいるかもしれません。
五月病の症状
では、五月病になると、具体的にどのような症状が出てくるのでしょうか?
五月病は、主に「適応障害」か「うつ病」であると記事冒頭でお伝えしました。
ここでは、適応障害とうつ病の症状についてお伝えします。
「適応障害」の主な症状
適応障害の症状は、一言でまとめるとストレスによる不調すべてをさします。
そのため、症状には大きな個人差があります。
- 気分が落ち込む
- 仕事や勉強への意欲がなくなる
- 集中力がなくなる
- 疲れやすくなる
- 寝つきや寝起きが悪くなる
- 食欲がない
- 動悸がする
- めまいがする
「うつ病」の主な症状
脳の機能低下が原因となるうつ病は、精神症状(こころの不調)に加えて、身体症状(からだの不調)も多くみられます。
- 気分の落ち込みが激しい
- 楽しめていた趣味に興味を持てない
- 倦怠感や疲労感が強い
- 食欲がない、もしくは増加する
- 眠れない、もしくは寝すぎてしまう
- 集中力や思考力がなくなる
- 「自分はいないほうがいい」と感じる
- 「死にたい」「消えたい」と感じる
前提として「この症状が出たら、この病気!」と言い切ることはできません。
ご本人は適応障害だと思っていたけれど、うつ病だった。
さらには、うつ病だと思っていたけれど、躁状態とうつ状態を繰り返す「双極性障害」だった……というケースも存在します。
上で挙げた症状に当てはまるとしても、あくまで参考程度にとどめて、まずは医療機関を受診して専門家に相談することが大切です。
五月病になりやすい人の特徴
心身に不調が出ることは誰にでもあるので、仮にこころの病気になったとしても、ご自身を責める必要はまったくありません。
基本的には、どんな方でも適応障害やうつ病を発症する可能性はあるとお考えください。
それをふまえて、中でも自分を追い込みやすい方の特徴を下記にまとめます。
- 義務感や正義感が強く、手を抜けない
- 完璧主義で、ミスや失敗を許せない
- 仕事熱心で、プライベートを犠牲にすることに抵抗がない
- 周囲を気遣うあまり、自分を雑に扱う
「自分を適度に甘やかして上手にストレスを解消できる人」と比較すると、「責任感が強く自分に無理を強いる人」のほうが、やはりストレスを溜め込みやすいと言えるでしょう。
五月病の予防と対策
ここからは、五月病の予防と対策について、4つのステップに分けて解説します。
- 自分のストレスを把握する
- 悩みを言葉にする
- 自分ができることを探す
- ストレスの原因を対処する
自分のストレスを把握する
ストレスに対して対策を取るためには、どのようなストレスを抱えているのか、自分自身で把握する必要があります。
- 不満や不安を紙に書き出す
- 信頼できる人に話を聞いてもらう
などの方法を用いながら、理想と現実のギャップがどこにあるのかを見つけましょう。
ストレスについて考える際は、オンオフを付けることも大切です。
常にストレスについて考えていたら、それだけで疲れてしまいますよね。
- 考える時間をあらかじめ決めておく(例:朝に考えて、夜は休む時間にする、お風呂の時だけ考える)
- 考え事をするときの方法を決める(例:紙とペンがあるときだけ考える)
など、無理しないためのルールを作っておくことをおすすめします。
悩みを言葉にする
ストレスの原因を見つけたら、それを信頼できる人に話してみてください。
頭の中で考え続けるより、思考を言葉にするほうが、隠れていた部分が明確になりやすいです。
周囲に相談できる人がいなければ、カウンセラーや臨床心理士など、専門家を頼るのもいいでしょう。
客観的な視点が加わることで、新しい解決策が見えてくるかもしれません。
自分にできることを探す
環境を変えるのは、そう簡単ではありません。
環境のコントロールを試みるより、自分にできることを探すほうが取り組みやすいでしょう。
- 苦手な人と気持ちよく付き合うために、まずは挨拶から始めてみる
- 自分の思考パターンを考えて、思い込みや決めつけがないか探してみる
- 新しい目標を決めて、それに向けて努力する
- 家族や友達付き合い、自分の趣味など、仕事以外にも目を向ける
ひとりで考えることが難しければ、相談いただくのも方法かと思います。。
ストレスの原因を対処する
ストレスの対処法は、主に3つに区分されます。
- ストレスに「耐える」
- ストレスを「そらす」
- ストレスを「発散する」
すぐに意識できるのは、ストレスを「発散する」方法です。
「耐える」はいつか心身に限界がきますし、「そらす」ために考え方や価値観を変えるのは簡単ではありません。
ストレスを発散する方法は人によってさまざまですが、大きくは2つに分けられます。
- 即効性タイプ:効果は小さいけれど、すぐに始められる
- 効果優先タイプ:効果は大きいけれど、時間とエネルギーが必要
「即効性タイプ」は、仕事や学校に行きつつ、隙間の時間で取り組めることです。
- 好きなものを食べる
- 思い切り叫ぶ、歌う
- クッションなどを思い切り叩く
- 好きなテレビや音楽を楽しむ
- アロマや入浴剤を使う
- 呼吸を整える
- 瞑想する
など、空いている時間にサッとできるストレス発散の方法を、いくつか自分の中にストックしておくといいでしょう。
「効果優先タイプ」は、土日や長期休暇など、時間があるときに取り組めることです。
- 休日にスポーツを楽しむ
- 近所の公園を散歩する
- 旅行やドライブに行く
- 趣味の時間を確保する
中でも、適度な運動は心身の安定につながります。
本格的なスポーツでなくても、「家の近所を散歩する」「意識的に階段を使う」「最寄駅の一駅前で降りて徒歩で帰宅する」など、体を動かす習慣をぜひ取り入れてみてください。
ひとりで抱え込まないために
「自分だけでは心身の不調に対処できない」と感じたら、迷わずに周囲の人に相談してください。
勤めている会社の産業医や、信頼できる上司や人事部に相談するのもいいでしょう。
特にうつ病の場合は、医療機関での適切な治療が必要です。
状態が悪化する前に、「いつもの自分でない」ことが続いたら、病院やクリニックを受診することをおすすめします。
うつ病の治療は、現在の日本では
- 心身を回復させる「休息」
- お薬を用いた「薬物療法」
- 主に再発防止が目的の「精神療法」
- 副作用の少ない「TMS治療」
- 危険性の高い際の「電気けいれん療法」
などが、主な治療法としてあげられます。
一般的には、休息と薬物療法を組み合わせる方法が多いでしょう。
ただ、お薬の副作用により、薬物療法の継続が難しい方も存在します。
その場合は、お薬を用いないTMS治療を選択する方も近年増えてきました。
お薬を使わない「TMS治療」とは?
TMS治療とは、磁気を利用して脳をピンポイントで刺激する治療法です。
お薬を飲む必要がないため体への副作用が少なく、仕事や家事の合間に治療する方もいるほどです。
回復後の再発率の低さや、治療期間の短さも、TMS治療の特徴といえます。
TMS治療についてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
「五月病」についてのまとめ
今回の記事は、五月病の特徴や対処法について詳しく解説しました。
本記事のポイントを、下記にまとめます。
- 実際の診断では「適応障害」もしくは「うつ病」とされることが多い
- ストレスの原因を見つけて、困りごとを周囲に相談することが大切
- ストレスに耐えようとせず、自分に合ったストレス解消法を見つける
- うつ病と診断された場合は、休息と薬物療法を組み合わせて回復を目指す
- 薬物療法の副作用がつらい場合は、お薬を用いないTMS治療も選択肢のひとつ
TMS治療をご検討の方へ
当院「東京横浜TMSクリニック」は、お薬を用いた治療に加えて、専門チームを組んでTMS治療を行っています。
患者さまの状態に合わせて、適切な治療法をご説明いたします。
当院の詳しい特徴に関しては、以下の記事を参考にしてください。
心身の不調は、ご自身が「おかしいな?」と感じたときに、速やかに医療機関を受診するのが回復への近道です。
「こんなことで受信していいのかな……」と悩まずに、些細なことでもお気軽に当院までご相談ください。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。
また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。
取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。
執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2022年3月12日
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