MCI患者に対する認知機能改善薬の有効性と安全性:システマティックレビューとメタアナリシス
こちらの論文は、
のページに引用しています。
MCIに認知症治療薬は非推奨
こちらの論文は、認知症治療薬として発売されているお薬の研究を網羅的に調べて、MCI(軽度認知機能障害)に対する効果と安全性を検証した論文になります。
結果として、MCIの患者さんに対しては認知機能の有意な改善効果を認めることはできませんでした。
むしろ胃腸障害を中心に、副作用によるデメリットの方が強くあらわれています。
このためMCIに対しては、認知症治療薬は推奨されていません。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
コリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンなどの認知機能改善薬は、認知症の治療に用いられているが、軽度認知障害に対する有効性は不明である。
我々は、軽度認知障害に対する認知機能改善薬の有効性と安全性を検討するためにシステマティックレビューを行った。
方法
組み入れ対象としたのは、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチンの軽度認知障害に対する効果を報告した研究で、認知、機能、行動、グローバルな状態、死亡率や有害性を評価したものであった。
電子データベース(MEDLINE、Embaseなど)、対象とした研究の参考文献、試験登録、会議録の検索、および専門家への問い合わせにより、関連資料を確認した。
2人の審査員が、文献検索の結果を独立して審査し、データを抽出し、Cochrane risk-of-bias ツールを用いて偏りのリスクを評価した。
結果
15,554件のタイトルと抄録、1384件のフルテキストの論文をスクリーニングした。8件のランダム化臨床試験と3件のコンパニオンレポートが、組み入れ基準を満たしていた。
その結果、認知機能改善剤の認知(Mini-Mental State Examination:ランダム化臨床試験[RCTs]3件、平均差[MD]0.14、95%信頼区間[CI] -0.22~0.50;アルツハイマー病評価尺度-認知サブスケール:3RCTs、標準化MD -0.07、95%CI -0.16~0.01])または機能(Alzheimer’s Disease Cooperative Study activities of daily living inventory:2RCTs、MD 0.30、95%CI -0.26~0.86)に対する有意な効果は認められなかった。
認知機能改善薬は、プラセボと比較して、悪心、下痢、嘔吐のリスクが高かった。
解釈
認知機能改善薬は、軽度認知障害の患者の認知機能を改善せず、胃腸障害の高いリスクと関連していた。
今回の結果は、軽度認知障害に対する認知機能改善薬の使用を支持するものではない。
【お読みいただいた方へ】
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年7月29日
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