強迫性障害に対するdTMSの有効性と安全性:前向き多施設ランダム化二重盲検比較試験

こちらの論文は、

のページに引用しています。

dTMSは強迫性障害に有効で半数近く改善

こちらの論文は、強迫性障害のdeepTMS治療について調べた論文になります。

厳格に管理された研究になり、本当の刺激と偽刺激を誰もわからないようにして、ランダムに振り分けして後から結果を解析しています。

刺激のターゲットは、内側前頭前野(dmPFC)と前帯状皮質(ACC)、頻度は20Hzの高頻度、この条件で深部経頭蓋磁気刺激(dTMS)を行っています。

強迫性障害は非常に難治で、治療ゴールは30%の重症度の改善と定義します。

その条件で1か月追跡すると、半数近くが改善目的を達成できている結果となりました。

治療に難渋することが多いOCDでは、とても期待のできる治療法になります。

これをうけてさらに大規模な研究がなされ、アメリカで正式に強迫性障害のTMS治療の適応が認められました。

サマリーのご紹介

強迫性障害のdTMSについてのRCTをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。

以下、日本語に訳して引用させていただきます。

目的

強迫性障害(OCD)は慢性的な障害であり、薬理学的治療や心理学的治療に満足に反応しないことが多い。

OCDにおける皮質-線条体-視床-皮質回路の機能不全が関連するエビデンスによって示唆されており、過去に実施された実行可能性調査では、内側前頭前野と前帯状皮質を標的とした深部経頭蓋磁気刺激(dTMS)の有益な効果が示された。

著者らは、多施設二重盲検比較試験におけるdTMSの治療効果を検討した。

方法

11施設において、99名のOCD患者が高頻度(20Hz)または偽dTMSのいずれかの治療に無作為に割り付けられ、6週間にわたり毎日個別に症状の誘発を確認した後に治療処置を実施した。

治療に対する臨床反応はYale-Brown強迫性尺度(YBOCS)を用いて評価し、主要評価項目はベースラインから治療後の評価までのスコアの変化とした。

その他の評価項目は、治療後の評価時および1ヵ月の追跡調査時の反応率(YBOCSスコアの30%以上の低下と定義)とした。

結果

高頻度dTMS治療群の89%および偽dTMS治療群の96%が本試験を終了した。

高頻度dTMS治療を受けた患者のYBOCSスコアの低下は、偽dTMS治療を受けた患者よりも有意に大きく(それぞれ6.0ポイント、3.3ポイントの低下)、奏効率はそれぞれ38.1%、11.1%であった。

1ヵ月追跡調査時の奏効率は、高頻度dTMS治療群で45.2%、偽dTMS治療群で17.8%であった。両群間の有意差は追跡調査時にも維持されていた。

結論

内側前頭前野および前帯状皮質に対する高頻度dTMSはOCDの症状を有意に改善し、薬理学的および心理学的介入に十分に反応しない患者に対して治療介入出来る余地があると考えられる。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年1月23日

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

目次 東京TMSクリニック® 東京でのTMS治療 東京で安心できるTMSクリニック5選 東京でTMS治療を受けられるその他の16医療機関 TMS治療クリニックの選び方 東京横浜TMSクリニックについて 感染対策について … 続きを読む 【2024年8月最新】東京のTMS治療クリニック21院!見極めポイントを精神科医が詳しく解説

投稿日:

コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

臨床研究の概要 医療法人社団こころみ東京横浜TMSクリニックは、「コロナ後遺症に伴う不安抑うつ・認知機能障害に対する新規経頭蓋刺激療法(rTMS)による治療法開発に向けた多施設共同試験」を実施いたします。 新型コロナウイ… 続きを読む コロナ後遺症に対し新規経頭蓋磁気刺激法(rTMS)による治療開発 ~多施設共同ランダム化プラセボ対象比較試験の開始~

投稿日:

人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説

投稿日:

スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

勝負が決まる場面で思うようなプレーができず、悔しい思いをしたアスリートの方もおられるのではないでしょうか。 競技中に手がふるえたり、動かなくなってしまったりして、いつも通りのプレーができなくなってしまうことがあります。 … 続きを読む スポーツ選手を悩ますイップスの症状とは?薬に頼らない治療法についても解説

投稿日:

精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

「車がないと会社に通勤できない」 「仕事で車を運転する必要がある」 「生活するうえで、車がないと困る」 日常生活の中で、車の運転が必須になっている方もいるでしょう。 それは、精神疾患の治療をしている患者さんも同じです。お… 続きを読む 精神疾患のお薬を服用しながら運転はできる?お薬に頼らない治療法も紹介

投稿日: