TMS治療の効果と治療プロトコール

効果的なTMS治療とは?

TMS治療は、はじめに集中的に治療していくことが治療効果を高めます。

TMSのプロトコールをどのように調整すれば効果が期待できるか、様々な研究がなされています。

近年では様々な治療プロトコールが開発されており、より短時間で効果的な治療方法が模索されています。

こちらではTMSの刺激パターン、刺激量やセッション数での効果の違いをもとに、現状開発されているプロトコールについてご紹介させていただきます。

rTMSとiTBS

rTNS・iTBS・cTBSのプロトコールを図解しました。

従来のTMS治療は、rTMSと呼ばれる規則的なパターンで刺激をして、高頻度(10Hz)で興奮させ、低頻度(1Hz)で抑制させることで治療効果を期待していました。

高頻度の刺激方法については、iTBSという特徴的な刺激パターンにすることで、1/10程度の時間で同等の効果が期待できること(THREE-D)が示されました。

時間がぐっと短縮されたことで、費用面も含めて治療負担が大きく軽減されました。

rTMSのプロトコール

日本の保険診療では、現状としてはrTMSしか行うことができません。

rTMS療法のプロトコールも、より短時間で同等の効果ができるDASHプロトコールが承認され、海外ではニューロスターという治療機器で導入されています。

これまで高頻度刺激では4秒刺激し26秒インターバルとしていたものを、インターバルを11~25秒と調整ができるようになり、治療時間をこれまでの37.5分から最短で18.75分まで半減させた方法で、同等の効果が認められています。
【大うつ病性障害に対する2つのrTMSプロトコル臨床結果の比較】

rTMS

iTBSのプロトコール

やはり治療時間で考えると、iTBSでは3分20秒で同等の効果が期待できるため、現実的にはこちらが経済合理性にすぐれます。

iTBSでも、刺激量とセッション数の組み方の違いが、効果と安全性の面で様々な研究がなされています。

iTBS

刺激数とセッション数はどちらが大切?

これまでは刺激数がより多いほど効果は強まると考えられてきました。このため東京横浜TMSクリニックでも、倍量iTBSを基本プロトコールとして少しでも治療効果を高めるようにしてきました。

しかしながら刺激量よりもセッション数のほうが効果にインパクトが大きいのではないかとする報告がなされてきています。

当院の統計でも、600発のiTBSでも遜色ない治療成績が認められ、それを根拠にしてiTBS600発として価格を抑え、標準プランに変更いたしました。

【シータバーストrTMSの用量依存的効果は、運動システムの皮質興奮性と安静時の接続性に及ぼす】

その一方で、1回の刺激量よりも治療セッション数のほうが重要であることもわかってきました。
【rTMSパルスを増やすかセッションを増やすか?治療抵抗性うつ病の治療結果への影響】

aTBSのインターバルはどれくらい必要?

治療のインターバルは、理想的には1時間空けたほうが良いと考えられています。

少なくとも30分は空ける必要があります。

インターバルを開けずに刺激をしてしまうと連続刺激しているのと同じとなり、繰り返しによる神経可塑性(神経の結びつきの柔軟さ)のLTP(長期増強)効果が薄れてしまうと考えられます。

特殊な治療プロトコール

プロロングiTBS

プロロングTBS(piTBS)とは、prolonged Intermittent Theta Burst Stimulation(延長間欠的シーターバースト刺激法)の略で、iTBS治療法を3倍の長さで続ける治療法になります。

刺激方法はiTBSと同様で、3倍の刺激時間(10分1800発)を1回のセッションとして行っていきます。

刺激時間を3倍にすることで効果をより増強する方法で、刺激量が増えることでの副作用は報告されていません。

piTBSは台湾の研究グループを中心に研究されていますが、通常のTBSに比べて良好な治療成績が報告されています。

piTBS

SAINT

SAINTプロトコールとは、3倍量iTBSを1日10セッション×5日で計50回の刺激を行うプロトコールになります。

スタンフォード大学により開発されたため、SAINTプロトコール(Stanford Accelerated Intelligent Neuromodulation Therapy)と呼ばれています。

1週間で90,000発という日本の安全性上限の15,000発よりはるかに多い刺激量ですが、21人中19人(90.48%)という衝撃の寛解率が報告され、安全性も問題ないという結果となっています。
【治療抵抗性うつ病に対するスタンフォード式ニューロモジュレーション治療(SAINT)】

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

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執筆者紹介

尾花 正義

東京都立荏原病院リハビリテーション科部長/東京大学医学部附属病院リハビリテーション科非常勤講師/当院顧問

日本リハビリテーション医学会/日本ボツリヌス治療学会/日本神経学会/日本老年医学会/日本義肢装具学会

日本リハビリテーション医学会専門医・指導医/難病医療費助成制度における指定医(リハビリテーション科)/身体障害者指定医(肢体不自由、平衡機能障害、 音声・言語機能障害、そしゃく機能障害)

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2025年1月8日

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