PTSDおよびMDDに対するTMSの臨床反応のネットワークメカニズム
こちらの論文は、
のページに引用しています。
うつ病とPTSD合併例では左DLPFCも選択肢?
こちらの論文は、PTSDとうつ病を合併している患者さんでのTMSによる脳での結合性変化を評価した報告になります。
うつ病の患者さんでは、sgACC(BA25野)とデフォルトモードネットワークの機能結合が病的に高まっていて、これがTMS治療によって正常化することがわかっています。
こちらの研究では、この機能結合をみることで、臨床反応を予測できるかもしれないことを示しています。
sgACC(前帯状回の梁下野)と強い逆相関となっていたDLPFC(背外側前頭前野)を刺激すると、強い抗うつ効果が発揮されることが見いだされ、TMS治療のターゲットとなりました。
こちらの研究は、機能的な解析がメインではありますが、その過程でPTSDとうつ病を合併している患者さんでの前向き非盲検試験を行っています。
PTSDもうつ病も、およそ1/3が臨床的に有意な改善を認めたと報告されています。
一般的には右DLPFC低頻度刺激がPTSDには行われますが、うつ症状を伴っている場合は左DLPFC高頻度刺激も選択肢となるかもしれません。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
背景
反復経頭蓋磁気刺激(TMS)療法は、大うつ病性障害(MDD)における病的な神経ネットワークの機能的結合を調節することができる。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)はMDDと併存することが多く、TMS療法によって両疾患の症状が緩和される可能性がある。
本研究は、PTSDとMDDが合併する患者において、TMSによる結合性の変化を評価した初めての研究である。
方法
成人外来患者33名を対象に、TMS治療の前後に安静時機能的結合性磁気共鳴画像を取得し、前向きオープン試験を行った。
左背外側前頭前野に5HzのTMSを1日最大40セッション照射した。
解析では、TMS、PTSD、MDDに関連するアプリオリなシード(前帯状皮質下層 [sgACC]、左背外側前頭前野、海馬、基底外側扁桃体)を用いて、画像による反応の予測因子を同定し、TMS後の臨床的に関連する結合性の変化を評価した後、一個抜き交差検証を行った。
イメージングの結果は、データ駆動型の多ボクセルパターン活性化を用いて検討した。
結果
扁桃体と内側前頭前野の結合性が正であることと同様に、sgACCとデフォルトモードネットワークの間の治療前の結合性が負であることが臨床的改善を予測した。
TMS後、症状の軽減はsgACCとデフォルトモードネットワーク、左背外側前頭前野、島皮質との結合性の低下、海馬とサリエンスネットワークとの結合性の低下と関連していた。
多ボクセルパターン活性化により、シードベースの予測因子と治療成績の相関が確認された。
結論
これらの結果は、TMS反応の予測因子としてsgACC、デフォルトモードネットワーク、サリエンスネットワークが中心的な役割を果たしていることを強調し、作用機序への関与を示唆するものである。
さらに、本研究は、これらの一般的に合併する疾患に関連する、ネットワークベースの臨床反応のバイオマーカーがあるかもしれないことを示している。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年7月27日
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