心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療のための反復経頭蓋磁気刺激(rTMS):システマティックレビューとネットワークメタアナリシス

こちらの論文は、

のページに引用しています。

PTSDのターゲットは右DLPFCが有望?

こちらの論文は、PTSDに関するTMS治療の論文を網羅的に調べて分析した論文になります。

10件のランダム化比較試験421名を分析したところ、右DLPFCをターゲットとするrTMSでの有効性が認められました。

その刺激方法として、低頻度刺激も高頻度刺激もどちらも効果が認められています。

その一方で、dmPFCに対するdeepTMSや右DLPFCiTBS、左DLPFC高頻度rTMSでは有効性が示せませんでした。

PTSDも脳の機能的な異常を基盤とする病気と考えられていますので、研究が進むことが期待されます。

現在のところ、PTSDのTMS治療ターゲットとしては右DLPFCが期待できます。

うつ症状が合併している場合などでは、右DLPFC低頻度刺激を行うことは治療的な意義はあるかと思います。

論文のご紹介

PTSDに関するTMS治療のシステマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスをご紹介します。

英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。

背景

反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の有望な治療法である。

いくつかのターゲットや刺激パラメータが検討されており、過去のメタアナリシスではrTMSの有効性が示唆されているが、これらは異なる刺激パラメータやターゲットをプールしたものであり、それぞれの相対的な有効性は不明である。

方法

MEDLINE、EMBASE、CENTRALおよびPsycINFOを検索し、各アームに5人以上の被験者がいて、臨床医が評価したPTSD症状を有するランダム化対照試験(RCT)を保持することで、RCTのシステマティックレビューとネットワークメタアナリシスを行った(PROSPERO CRD42019134984)。

PRISMAガイドラインを遵守し、2名の独立した審査員が研究の適格性を審査し、臨床医が評価したPTSD症状を主要アウトカムとして抽出した。

脱落者は忍容性の代わりとして抽出した。

ランダム効果ペアワイズメタアナリシスとネットワークメタアナリシスを行った。

結果

10件のRCTからのデータを統合し、合計421名の参加者を対象とした。

右背外側前頭前野(DLPFC)を標的とした2つのrTMS介入は、低頻度刺激(SMD=0.70;95%CI、0.22~1.18)および高頻度刺激(SMD=0.71;95%CI、0.11~1.31)により、偽刺激と比較してPTSD症状を改善した。

内側PFCに対するdTMS、右DLPFCに対する間欠的シータバースト刺激、左DLPFCに対する高頻度刺激は、偽刺激との差がなかった。

忍容性の代わりとしての脱落は、いずれの種類の実刺激も偽刺激との間に差がなく、いずれの実刺激も相互に差がなかった。

結論

現在の文献では、介入策間の有効性の違いを支持していない。

しかしながら、右DLPFCを刺激するプロトコルは偽刺激よりも優れているようである。

これが個別化医療のアプローチを必要とする病態の不均一性を反映しているのか、それともrTMSの非特異的メカニズムを反映しているのかは不明である。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2021年7月3日

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