レストレスレッグス症候群とTMS治療

レストレスレッグス症候群とTMS治療について、精神科医がエビデンスをもとに詳しく解説します。

レストレスレッグス症候群にTMS治療は、「効果があるかはまだはっきりしていない」と考えられています。

適切なプロトコールは確立されておらず、効果の持続もはっきりしていません。

このためレストレスレッグス症候群にうつ病を合併している場合は、TMSは治療選択肢のひとつになります。

ここではレストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)についてご紹介し、治療選択肢として薬に頼らないTMS治療の可能性をお伝えしていきたいと思います。

レストレスレッグス症候群とは?

レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)は、睡眠中や安静時に、主に脚の不快な感覚が生じ脚を動かしたいという強い衝動がみられる病気です。

やや女性に多く、妊娠期にみられやすいです。むずむず脚症候群と呼ばれることもあります。

レストレスレッグス症候群の原因としては、脳内でのドパミンの働きが低下するという機序が推測されています。

最も特徴的な症状は、脚の不快感、それに伴う「脚を動かしたい」という強い欲求です。

患者さんにより不快感の感じ方は様々です(むずむずする、虫が這う、痛い、灼けるように熱い、かゆい、だるい、しびれる、くすぐったい、硬直する、むくむなど)。

また、人によっては同じような症状が手や背中に生じることもあります。

レストレスレッグス症候群の診断

国際RLS研究グループの診断基準5項目を満たす場合、RLSと診断します。

  • 脚を動かしたいという強い欲求があり、不快な脚の異常感覚に付随して生じる
  • 脚を動かしたいという強い欲求や異常感覚が、静かに横になったり座ったりしている状態で始まる、または増悪する
  • 脚を動かしたいという強い欲求や異常感覚が、歩いたり脚を伸ばしたりといった運動を続ける間、部分的または完全に改善する
  • 脚を動かしたいという強い欲求や異常感覚が、夕方・夜間にのみ起こる、または夕方・夜間にのみ増強する
  • 上記の特徴は、他の疾患や行動状態の主要な症状として説明できない(筋肉痛、静脈うっ滞、下腿浮腫、関節炎、こむら返り、姿勢による不快感など)

レストレスレッグス症候群の診断自体に必要な検査は必要ありませんが、何らかの基礎疾患に伴う可能性がないかどうかを問診、診察と検査で確認します。

具体的には、鉄欠乏性貧血、妊娠、腎不全、心不全、関節リウマチ、パーキンソン病、末梢神経障害、脊髄障害、ビタミン欠乏症などです。

レストレスレッグス症候群の基本的な治療法

まずは以下のように薬を用いない治療を行います。

効果に乏しければ薬物治療を考慮します。

  • 日中の適度な運動、入眠前の入浴、脚のマッサージによる睡眠の質の改善
  • カフェイン、アルコール、タバコを控える
  • 症状を悪くするような薬を減量・中止する(抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、抗精神病薬など)

血液検査で鉄欠乏があれば、鉄剤を開始します。

胃切除術後や萎縮性胃炎などのため、口からの鉄吸収が難しい場合には、点滴静注による鉄の補充を行います。

また基礎疾患があれば、その治療も行います。

レストレスレッグス症候群に対する薬物治療では、ドパミン作動薬が選択されます。

  • ビ・シフロール(一般名:プラミペキソール)
  • ニュープロ(一般名:ロチゴチン)

十分に効果が得られない場合は、

  • リボトリール/ランドセン(一般名:クロナゼパム)
  • レグナイト(一般名:ガバペンチン)

といったお薬が使われます。

治療目標は症状の消失ではなく、過度に気にならない程度に落ち着かせることです。

レストレスレッグス症候群に対するrTMS治療方法と費用

rTMS治療では、うつ症状を伴うレストレスレッグス症候群に対する治療効果を期待していきます。

レストレスレッグス症候群の原因は不明のことも多いですが、薬物療法でコントロールできることがほとんどです。

ですからまずは薬物療法を行い、どうしても改善がない場合のみTMS治療を考慮するべきです。

レストレスレッグス症候群では、補足運動野や一次運動野での高頻度rTMSでの報告が多いですが、うつ症状を伴っている場合はDLPFCがターゲットになります。

うつ症状をrTMS療法で改善することができれば、レストレスレッグス症候群の症状改善にもつながります。

レストレスレッグス症候群のTMS治療プラン

レストレスレッグス症候群のTMS治療としては、大きく2つの方法が行われます。

  1. 右背外側前頭前野への低頻度刺激
  2. 左背外側前頭前野への高頻度刺激

右低頻度刺激が睡眠ではエビデンスがあり、基本的な治療プロトコールになります。

左高頻度刺激については、うつ症状が目立つ場合は効果を期待していきます。

当院でのTMS治療費

当院の治療費については、機械の使用時間をもとに設定しております。

  1. 左高頻度刺激:10分枠  6,930円(税込)※継続 5,280円~
  2. 右低頻度刺激:20分枠 13,200円(税込)※継続 9,900円~
  3. 右低頻度刺激:30分枠 15,840円(税込)※継続 12,320円~

治療費について詳しくは、TMS治療費のページをご覧ください。

レストレスレッグス症候群でのTMSのエビデンス

症例数は少ないですが、レストレスレッグス症候群に対する高頻度rTMSの有効性を示した報告があります。

ランダム化二重盲検シャム対照比較試験(19例、刺激10セッション/4週、観察4週)で、補足運動野へのHF-rTMSにより国際的なレストレスレッグス症候群の評価尺度であるIRLS-RS(international RLS rating scales)の大幅な改善(78%低下)を認めました。
【レストレスレッグス症候群における反復経頭蓋磁気刺激:予備的結果】

その他の論文

これまでの研究をまとめたレビューでは、レストレスレッグス症候群に対しての最適なターゲットは試行錯誤されています。

一次運動野や補足運動野に対する高頻度rTMSや、一次体性感覚野に対する低頻度rTMSが、少なくとも一過性の効果が認められることがわかってきています。
【レストレスレッグス症候群における経頭蓋磁気刺激の寄与:病態生理学的知見と治療的アプローチ】

TMS治療をご検討の方へ

TMS治療の効果の強みと、向いている患者様をまとめた図表になります。

レストレスレッグス症候群はお薬による治療を基本として、貧血などの原因があれば改善をこころみるのが一般的です。

しかしながらうつ症状を合併していたり、お薬を使えない事情がある場合は、TMSも治療選択肢となります。

このように適切なTMS治療を行っていくためには、TMS治療の知見はもちろんのこと、前提となる心の治療経験が非常に大切です。

当院には12名の精神科医が在籍していますが、両方に精通した医師4名のみ(2021年9月現在)が担当させていただきます。

TMSは治療選択肢のひとつとして、患者さんの立場に立ってご相談させていただきます。

TMS治療にご興味お持ちの方は、東京横浜TMSクリニックにご相談ください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。

医療法人社団こころみ採用サイト

また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

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執筆者紹介

三宅 善嗣

神経内科医・理学博士

日本神経学会神経内科専門医/日本臨床神経生理学会専門医/日本内科学会認定内科医

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:こころみ医学  投稿日:2023年3月10日

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