背外側前頭葉皮質への高頻度rTMSの過食症状に対する臨床効果の欠如:ランダム化二重盲検試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
目次
過食症状に左DLPFC高頻度刺激は効果みられず
こちらの研究は、神経性過食症の患者さんに対して、左DLPFCへの高頻度刺激の効果を調べたRCTになります。
神経性過食症とは、ボディイメージのゆがみが背景にある摂食障害になります。
ただ過食を繰り返してしまうだけでなく、体重や体型についての過度なとらわれがあって、正しく認知できていない状態になります。
いわゆる「むちゃ食い」である過食性障害とは質が異なる摂食障害で、こういった神経性過食症の患者さんでは左DLPFC高頻度刺激は効果が期待しにくいかもしれません。
このように過食症に対するTMS治療としては、神経性の症状については効果が期待しにくく、病態的に依存症に近いような「むちゃ食い障害」の方が効果が期待できる可能性があります。
論文のご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。以下、日本語に翻訳して引用させていただきます。
アブストラクト
左背外側前頭葉皮質(DLPFC)への刺激が過食症患者の食物渇望を軽減することを示唆する研究があるが、治療手段としての反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)を支持するエビデンスは不足している。
我々は、左DLPFCを標的とした高周波rTMSプログラムを補助的に行うことで、安全性と治療効果を調査した。
神経性過食症の女性47名を、実刺激群と偽刺激群へ無作為に割り付けた。
実刺激群では、周波数10Hzで、5秒間のトレーニングを20回、トレーニング間の間隔を55秒としたrTMSセッションを10回行った。
主要評価項目は、刺激終了後の15日間における過食エピソードの数であった。
全体的に、プログラム終了後、過食およびパージング(排出行動)の有意な改善は認められなかった。rTMSの忍容性は良好であった。
以上のことから、左DLPFCへの高周波rTMSを10回実施しても、プラセボと比較して大きな効果は得られないことが示唆された。
今後の研究では、方法論的な問題や別のターゲットを検討する必要がある。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、各クリニックでコンセプトをもち、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(総合職)も随時募集しています。
また、当法人ではTMS診療の立ち上げ支援を行っており、参画医療機関には医療機器を協賛価格でご紹介が可能です。
ご興味ある医療者の見学を随時受け付けておりますので、気軽にお声かけください。
取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。
![画像名の[sample]の部分に記事の名前を入れます](https://www.tokyo-yokohama-tms-cl.jp/wp-content/uploads/2023/03/0390f3b07795cf162da516011a668f81-scaled.jpg)
執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年4月8日
関連記事
【FDA承認のプロトコル】慢性疼痛に対する磁気末梢刺激の効果
慢性疼痛とTMS治療に関しては下記をご参照ください 慢性疼痛(線維筋痛症)とTMS治療 慢性疼痛に効果が期待できる磁気末梢刺激とは? 慢性疼痛に対する磁気末梢神経刺激(mPNS)が2023年8月25日にFDA*で承認され… 続きを読む 【FDA承認のプロトコル】慢性疼痛に対する磁気末梢刺激の効果
投稿日:
人気記事

子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説
「長い子育てを終えて、やっとひとりの時間ができる」 「子育て中はできなかったことを、たくさん楽しもう!」 そんな風に、子育てを終えた解放感を味わう方もいるでしょう。ですがその反面、強い喪失感や虚無感に苦しむ方も存在します… 続きを読む 子育てひと段落で喪失感?「空の巣症候群」になりやすい人と治療法を解説
投稿日: