うつ病患者へのシータバースト法vs高刺激rTMSの有効性(THREE-D):ランダム化非劣性試験
こちらの論文は、
のページに引用しています。
シーターバースト法では3分で従来と同等以上の効果が期待できる
こちらの研究は、FDAにてうつ病のシータバースト治療の適応が認められるきっかけとなった非常に重要な研究です。
ランセットに掲載されている論文で、当院の技術・学術顧問の野田先生も共著されている論文になります。
従来のrTMSと同等以上の効果がiTBSでも期待できることを、エビデンスとして確立されました。これによって3分でうつ病TMS治療が行えるようになり、TMS治療の負担も大きく軽減されることとなりました。
論文の中では、TBSの効果はrTMSと比べて非劣勢(劣らない)ことが示されていて、頭痛だけがやや多いという結果となっています。しかしながら治療を中止するほどの頭痛とはならず、安全性の面でもTBSは有用な治療プロトコールであることが示されました。
サマリーのご紹介
英語原文は、こちら(Pub Med)をご覧ください。
以下、日本語に訳して引用させていただきます。
背景
治療抵抗性大うつ病性障害はよく遭遇する障害である。左背外側前頭皮質への高頻度(10Hz)刺激による反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は根拠に基づいたこの障害に対する治療法である。
間欠的シータバースト刺激(iTBS)はより新しいrTMSの形であり、標準10Hzでは37.5分かかるところが、3分でおわる。
我々の目的は、治療抵抗性うつの成人に対する標準的な10Hz rTMSと比較し、iTBSの臨床的効果、安全性、忍容性を確立することである。
方法
今回のランダム化多施設非劣性臨床試験で、3つのカナダの大学を拠点とする神経刺激専門センターへ紹介となった患者を集めた。
参加者は18-65歳の現在治療抵抗性大うつ病エピソードと診断されたまたは少なくとも二剤の抗うつ薬に抵抗性があり、試験前に最低四週間以上抗うつ薬を定期的に投薬され、HRSD17スコアで18以上であった。
参加者はランダムに10Hz rTMSまたはiTBS治療群に1:1に振り分けられた。ランダム化には置換ブロック法を用い、抗うつ薬が不成功であったトライアルの場所と患者数により層別化した。治療は非盲検で行われたが、治験責任医師及び効果判定者に対しては治療群はマスクされた。
参加者は左背外側前頭皮質への10Hz rTMSまたはiTBS治療が週五日、4-6週間行われた。主要効果判定はHRSD17スコアの変化で判断され、非劣性マージンは2.25ポイントであった。
主要効果判定方法として、我々は無作為に振り分けられ四週間の最初の完了ポイントを迎えた参加者全員について、プロトコールに基づいた解析(per-protocol analysis)をおこなった。この試験はClinicalTrials.govにNCT01887782で登録されている。
結果
2013年9月3日〜2016年10月3日の間に、無作為に205人を10Hz rTMS、209人をiTBS治療群に割り振った。
10Hz rTMS群では192人(94%)、iTBS群では193人(92%)に対して4-6週の治療後初期治療効果判定が行われた。
HRSD17スコアは10Hz rTMS群で23.5(標準偏差4.4)から13.4(標準偏差7.8)、iTBS群で23.6(標準偏差4.3)かは13.4(標準偏差7.9)へと改善し(調整済み差 0.103, 95%以下CI -1.16, p=0.0011)、iTBSの非劣性を示した。
治療に関連した自己評価による痛みの強さは、10Hz rTMSに比べてiTBSで強かった(口頭式評価スケールにおける10段階評価の平均で3.8 対 3.4, p=0.011)。試験脱落率は両グループ間で差はなかった(10Hz rTMS: 13/205人[6%] 対 iTBS 16/209人[8%], p=0.6004)。
最も多かった有害事象は両グループにおいて頭痛であった(10 Hz rTMS 131/204人[64%]; iTBS 136/208人[65%])。
考察
治療抵抗性うつ病患者の治療としてiTBSは10Hz rTMSに劣らない。どちらの治療も、治療中断数は低く、似たような副作用、安全性、忍容性であった。
iTBSを用いることにより、臨床効果を損ねることなく、現在のrTMS装置で1日に治療できる患者数は数倍になりうる。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:こころみ医学 投稿日:2021年1月3日
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